レトリック事典 (効果的な文章の書き方)

レトリック事典

レトリック事典

 

この本は間違いなくスゴイ本です。その名も「レトリック事典」。

文章を書くことを仕事にしている人は多い。仕事にしてなくても、ブログを書いたり、Twitterでつぶやいたり、メールを打ったり。文章を書く作業は全ての人にとってどんどん身近になっています。

文章の文法は学校教育のどこかで習うけれど、"効果的"な文章の書き方を習う場所は少ない。いろんな本を読んで、何となく吸収していく。それがほとんどの人(僕も含めて)の文章の書き方だと思う。

この本は「なんとなく日々文章を書いている」という人たちに是非読んでもらいたい本。

まずページ数がスゴイ。800ページを越えてます。重い。値段も 6,825円。そして冒頭の一文からしてスゴイ。 

本書は、レトリックの、とくに≪あや≫の辞典である。

あぁ、 ≪あや≫の辞典とは……なんてマニアックな辞典なのだろう。

 

冒頭に負けず劣らず、800ページの内容もとにかくすばらしい。

日本語におけるレトリック=修辞技法を、体系的に網羅的にまとめられた一冊。

この本の説明文章を読むと…

日本の名文をレトリックの型から読み解く画期的事典。
省略、反復、比喩、誇張、対比、暗示、仮説論法…。効果的で魅力的な表現を求め、古代ギリシャ以来2000年以上にわたって西洋で研究・議論され続けてきた“レトリック”。その概念・技法を46の型にまとめ、明治から現代までの文学を中心に、古典や落語なども含めた時代を代表する日本の文章を例に解説。西洋のレトリック論と日本文学をつなぐ、初めての本格的レトリック事典!

 

その項目は、大きくは6部に、小さくは46項目に分けられています。

  1. 表現形態の「あや」
  2. 意味作用の「あや」または比喩
  3. 思考様態の「あや」
  4. 論証の「あや」
  5. 語形の「あや」
  6. 伝統レトリックの体系

がある。 全部は説明できないので今日は【表現形態の「あや」】の、幾つかの項目だけご紹介……

 

「語句の挿入」

玄関ーーといっても畳半分くぐらいの靴脱ぎ場にすぎなかったーーから次の部屋をのぞき込んでみて、はじめて異変が起こっていることを知った。(安岡章太郎『僕の昭和史』)

こんなふうに名作例文の引用により、 「語句の挿入」というのが何のことであるか解るわけです。

「≪転置≫あるいは≪語句の転置≫」

17世紀のジョン・スミスによれば「"転置"とは、端正さないし変異性を目指して、語を、正しい構成の語順から、いっそう美しく適切な語順へ移動させることばのあやである。

ふむふむ。つまり文章において「正しさ」と「美しさ」または「適切さ」は別のところにあり、後者を目指すべきだと言うところが何ともいえずいい。

さて、それは例えばどんな文章だろうか。

ゆうべ夜更けて帰つてきた道綱がまだ寝ていたので、それを起しに住つている間の、それは出来事だった。(堀辰雄『ほととぎす』)

なるほど、確かにこれは正しい(というか普通の)書き方ではないけれど、その分だけ、ただの文章ではなくなり、物語の変換を予感させる強い文章に変わります。なるほど。

 

「語句の反復」

反復とは、要するにおなじものごとをくりかえすことである。何を反復するのか、というところから、音字の反復、語句の反復、言語形式の反復など、いろいろなかたちが考えられる。

 これは解りやすく、どちらかと言えば直ぐに使える技法です。

去れど此学術上の作物が、如何に不愉快のうちに胚胎し、如何に不愉快のうちに組織せられ、如何に不愉快のうちに講述せられ、最後に如何に不愉快のうちに出版せられたかを思えば (夏目漱石『文学論』)

文学社会への不愉快さがよく解ります。文章を書いていると、できるだけ削ぎ落してシンプルにしたくなりがちですが、繰り返して冗長にするほど、相手に残ることがあります。

 

「音の反復」

なんのきこのき

このきはひのき

りんきにせんき

きでやむあにき

 

なんのきそのき

そのきはみずき

たんきはそんき

あしたはてんき

 

なんのきあのき

あのきはたぬき

ばけそこなって

あおいきといき

これはなかなか簡単にできそうにはありません笑  

普通の文章ではなかなか使えないけど、キャッチコピーなんかではよく使います。

でっかいどお。北海道。

(眞木 準)

とかとか。同一音を繰り返すという「不自然さ」は、意味と背反する関係にあり、このあやの存在価値は、ナンセンスな言葉的遊戯でもあります。やっぱ谷川さんや真木さんはすごい人です。

 

 

さてさて、いかがでしょうか。

こんな感じに、技法と例文がひたすら並ぶマニアックな辞典です。

本当はすべて紹介したいところですが、このまま42個書くのはつらいので…(希望があれば書きます!)

普段「何気なく」書いているやり方が整理されていてとてもありがたい一冊。

 

文章を書いていると、つい「正しさ」を追い求めがちになる。でも正しい文章ほど面白いものはありません。この本の技法も、よく言えば技法だし、逆に言えば変な文法でもあるわけです。 

 

さて、最後に我が社のどっかで聞いた格言を。

 

「正しいけど面白くない」より

「正しくはないけど面白い」を目指したほうがいい。

 

 

「だからと言って、お前の誤字脱字はどうにかならないか」と突っ込まれそうですが、それはただの僕のミスです。ごめんなさい、この場を借りて。 

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