教えて!テリー先生! 『このコピー英語でなんて言うの?』
みなさん、「テリー先生」をご存知でしょうか。
「Real英会話」というすばらしいアプリを開発されている最高の先生です。
ちなみにアプリ画面はこちら。
本当に面白いアプリなわけです。そして何が「REAL」なのかと言えば「日本語の会話」がとてもリアルなのです。
よくある英会話本などの形式ばったりありきたりな会話ではなくて、「あぁ確かにそんな感じに話すよなぁ」という納得できるリアルな会話が豊富なのです。
例えば…
ありますね。「あーこんな会話あるある」というリアルさを追求した英語学習アプリなのです。とても参考になります!!!(僕はまだまだ英語ができないのであまり信憑性ないですが)
で、ある時テリー先生が、こんなツイートしていました。
「ぜんぶ雪のせいだ」
みまさまご存知、2013年度、最も浸透したコピーです(独自調べ)
これは面白いと思ったわけです。
みんなが知ってるコピーを、英語にしたらどうなるんだろう?とふと興味を持ちました。コピーというのは、言語に依存したかなりややこしさをもっています。そこにこめられているニュアンスは、きっと直訳では伝わりません。
というわけで、
「テリー先生に聞いてみようではないか!」と思い立ったわけです。
すぐにFacebookでメッセージを送りました。「テリー先生、はじめまして…うんぬん」するとなんとすぐに返信があり「ぜひやりましょう」ということでメール一通で「教えて!テリー先生!このコピー英語でなんて言うの?」企画が決定した次第です。テリー先生、本当にありがとうございます。というわけで、早速いってみたいと思います。
そうだ 京都、行こう。
誰もが知っているこのコピー。もう20年も続いているJR東海のコピーです。数々の名作を生み出しているクリエイティブディレクターの佐々木宏さんの最高傑作ではないだろうかと思えるほどの名作。でもこの英訳はニュアンスがとても難しいと思います。とても平易な言葉ですが、「京都に」の「に」が入ってなくて「、」であったり、「そうだ」のあとには句読点もないです(そこらへんは字面を意識したのかもしれません)
テリー先生の訳は「Why not go to Kyoto?」ということになりました。
「テリー先生から一言」
気まぐれでパッと出た提案というような感じです。広告などでありそうなフレーズで、JRの広告としてはベストだと思います。文法も優雅でちょっと珍しいので、「京都」の雰囲気にぴったりではないかと思います。
なるほど。
でも一つ思うのは、「そうだ」という、「今」思いついたからいってしまおう、という気軽さが抜けてしまっているかもしれません。今度はそのあたり聞いてみたいと思います!
「ボツ訳」-----------------------------------
① You know what, let’s go to Kyoto./You know what, I feel like going to Kyoto.
主語が明確なので自分への問いかけなのか、相手への提案なのかが限定されてしまいます。
② You know, Kyoto sounds nice.
日本語の「そうだ、京都、行こう」は自分への問いかけなのか、または相手への提案なのか曖昧なので、そういう面ではこの表現は合っているかと思います。"~ sounds nice"はある提案に対しての応答としてよく使われます。でもちょっと「京都」のイメージにはカジュアルすぎるかもしれません。
③ Wouldn’t Kyoto be nice?
ちょっとかたい表現です。
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ちなみに直訳すると、
“Oh yeah, let's go to Kyoto.”
がまずはじめにでてきたとか。さすがにあの荘厳な音楽が流れる中で「Oh yeah」と言われたらちょっと残念な気がしますね。
「きれいなおねえさんは、好きですか。」
こちらも92年ほど前から続いていたパナソニックの名作。直訳すると、Do you like pretty ladies? なのだそうですが…
「テリー先生から一言」
Who would say no to a beautiful lady?
きれいな女性に"No"と言う人はいないでしょ?という意味で、beautiful は pretty よりももっと上品な表現です。
「きれいなおねえさんは、好きですか」の中にこめられた、「好きですよね?」というニュアンスを表現してくれています。さすがテリー先生。
「ボツ訳」-----------------------------------
Everyone likes pretty ladies, huh?
男性への問いかけで、ちょっとカジュアルで皮肉った表現にも聞こえます。pretty は響きが子供っぽくて可愛すぎる気がします。
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さて、おつぎはこちら。
恋が着せ、愛が脱がせる。
「恋が着せ、愛が脱がせる。」これは眞木準さんが書いた、伊勢丹の名コピー。でも正直に言えば「え、もう一回言ってもらえますか?」といいたくなるややこしさがあります。マキジュンさんはほかにも「恋さえあれば、愛などいらない」とか、恋愛コピーがいくつかありますが、「恋」と「愛」のニュアンスは難しいところ。さて、テリー先生は、どう訳したのか……!
「テリー先生から一言」
「恋」をしているときはその人のことで頭がいっぱいの状態になるので、"obsession(執着)"という言葉を使いました。一方「愛」とは、期待や欲望を捨て、広い心で見守るということだと思うので"letting go(手放すこと)”という言葉にしました。
むむむ、これは深い。「着せる」というのは、いろんなものを重ねていくという意味合いであり、「脱がせる」はそれらを取り払って裸の状態で相手をみることである……(ということでしょうかね)深い、難しい。恋とか愛とかそういうものの微妙なニュアンスを表現できなきゃコピーなど書けないのでしょう。
ちなみに、Romance is about dressing, love is undressing. だそうです。僕は、このコピーに関しては、この直訳でいいのかな、と思っています。この方が日本語コピー同様に考えさせる力があると思うので。
では4つ目。
「愛とか勇気とか、見えないものも乗せている。」
これは知らない人もいるかもしれません。
1992年「九州旅客鉄道」に仲畑貴志さんが書いたコピー。とても車両の中でみんなが持っている想いをつい想像していまうすばらしい広告でした。
これですね。
それを英訳すると…
「テリー先生から一言」
”all that matters”は「大切なもの」「お金では買えないもの」というような意味で、日本語の「見えないもの」に相当する表現だと思います。
“all that matters”にはそんなニュアンスがこめられているのですね。知らなかった。直訳は、We also carry love, courage and that which you can't see. これもいいと思います。
ボツ訳--------------------------------------------
① Love, courage, and the unseen. We carry them all.
英語で"carry(運ぶ)"は「物を運ぶ」というイメージが強いので、乗客(人)に対してはあまり使われません。
② We bring love, courage, and the unseen to their destination.
英語で”unseen(見えないもの)”というとお化けを連想させちょっと薄気味悪いです。
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さて、本日のラストはこちらです
くうねるあそぶ
糸井重里さんがつくった名作コピーです。1989年の日産セフィーロ。(なんか昔のコピーばっかりになっちゃいましたね)
『テリー先生』の一言
Eat. Sleep. Play. 直訳も意訳も一緒です。リズム感がある表現です。英語にも "Work hard, play hard"という似たようなフレーズがあります。
「くうねるあそぶ。」が一つの文章になっているというところにも、「それらぜんぶつながっているのだ」というニュアンスがあるような気がします。「くう。ねる。あそぶ。」というコピーにもなってもよかったのですが、そこをひと単語にしたのはリズムとニュアンスをこめてひとつの文章にしたと思われます。そのニュアンスも、こんどまたテリー先生に聞いてみたいと思います。
さて、いかがでしたでしょうk。
日本語のコピーを他言語に変換してみると、コピーにふくまれているニュアンスを深く読み取ろうとしなければなりません。訳す、という作業には、言語の仕組みを深く考える事でもあるので、コピーを訳すというのは、英語とコピー両方の勉強になっていいのではないかと思ったわけです。
テリー先生、本当にありがとうございました!!!!
というわけで
みなさん、アプリダウンロードして使ってみてください!
400円ですが、本屋さんでうってるどの英語本より使えると思います。買って損はなし!!!
https://itunes.apple.com/jp/app/real-ying-hui-hua/id373563219?mt=8
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(記事が人気なら第二回がもやります!)
以上です!