『広告クリエイティブ』って何だろう?part1
この前、ちょっと面白い話を聞いた。
とあるコーヒーチェーンの話だ。
そこは僕がいつも行くお店なんだけど、
あるビルのオフィス棟の"中二階"的なところであり、
とても変な場所にあるせいか「人の入り」はあまり芳しくなかった。
だけどある日の夕方行ったらとても混んでいた。
いつもと活気が違うのだ。客層もなんとなく違う。
次の日にいってもやっぱり混んでいた。
それはやはりどう見ても混んでいたのだ。
そこで僕は店員さんに何気なく聞いてみた。
「どうして最近こんなに混んでるの?」
それで返ってきた言葉に、僕は大きな衝撃を受けた。
「あぁ、向こう側に看板がついたんですよ」
すごい答えだった。その何気ない一言は僕が5年間かけて学んだ広告クリエイティブ論(のようなもの)を根底から破壊する威力を持った何気ない一言だった。
「何をそんな大げさな」と思うかもしれない。
「看板をつける?そんなの当たり前じゃないか」と。そうだと思う。
人通りがあるけどお店のことを認識しづらい場所があるなら、そこに看板をつけるなんて当たり前すぎる。でも『広告業界』に毒されていた僕にとってその当たり前は、三周くらいまわってイノベーティブだった。
例えばもし「あのコーヒー屋の売上げを110%にしろ」と広告代理店のクリエイティブに依頼を持ちかけたとして「あそこに看板おけばいいんじゃないですか」と答えられる人はたぶんあまりいないと思う。少なくとも僕はできない。
現代の広告クリエイティブとは、CMは傑作であり、デザインはアートであり、コピーは視点であり、WEBは先進的であり、アイデアはいつもクールでなければならないのだ。「お前はなにをやったんだ?」「はい、看板を増やしました!」では、広告賞はとれない。そういう世界だ。
断っておくと、別に広告賞をとりたいために、みんなが広告を作っているわけではないです。でもそういう風潮が、広告クリエイティブ界には確かに存在している。
イノベーションだとか、素晴らしい映像だとか、
そういうものを考え始めるまえにやるべきことはきっとある。
スゴいことを考えるよりは、まずはやるべきことを考えるべきだ。
別に誰かの心を特別動かしたりはしない。
地味かもしれないし、地道なことかもしれない。
でもたぶん意味がある。
少なくとも大喜利みたいなキャッチコピーを考えるよりは、
必要な場所に看板を構えるほうが、遥かにクリエイティブなアウトプットだったのだ。
と教えてくれた、コーヒーチェーンと店員さんに感謝です。
この場を借りて<(_ _)>